建物を建築する材質である鉄骨鉄筋コンクリートと鉄筋コンクリート。
名前は似ていますが、その性質は全く異なります。材質を組み合わせて建物を頑丈にしていきますが、それぞれどんな特徴やメリットがあるのでしょうか?
本記事では鉄骨鉄筋コンクリートと鉄筋コンクリートの違い、メリットやその他の材質の特徴について解説していきます。
鉄骨鉄筋コンクリートと鉄筋コンクリートの違いを徹底解説!
中古マンションを購入する際、物件の構造や価格帯、さらにはリフォームの可能性について考慮する必要があります。どの物件を選ぶかは、ご自身のライフスタイルや条件に最適なものを選ぶことが重要です。
ここでは鉄骨鉄筋コンクリートと鉄筋コンクリートの構造の違いや特徴について解説していきます。
【鉄骨鉄筋コンクリート】
鉄骨鉄筋コンクリートは、“Steel(鉄骨) Reinforced Concrete”を略し「SRC構造」とも呼ばれている材質です。
鉄骨鉄筋コンクリートは鉄骨の骨組み周りに鉄筋を配し、コンクリートを流し込むことで造られます。単体で柱や梁に使用されるほどの強度を誇る鉄骨と鉄筋、コンクリートを組み合わせることで強度を高めることができます。また鉄骨は柔軟性にも優れているため、地震などの揺れに対する柔軟な対応が可能です。
鉄筋と、鉄筋より頑丈な鉄骨とをコンクリートで補強するので、強度が求められる高層マンションや高層ビルなどに用いられています。
【鉄筋コンクリート】
鉄筋コンクリートは、“Reinforced Concrete”を略し「RC構造」とも呼ばれている材質です。
より強化されたコンクリートという意味で、圧縮力に強いコンクリートの中に引っ張る力に強い鉄筋を埋め込んだ構造をしています。柱や梁、壁や床などの強度が必要な部分に多く用いられ、木造と比べて耐久・耐火・耐震・防音に優れているという特徴があります。
鉄筋とコンクリートの組み合わせで建物を支える工法で、10階建未満の低層マンションに多く用いられます。
鉄骨鉄筋コンクリートと鉄筋コンクリートの大きな違いはしなやかさです。
どちらも強度は申し分ないので、予算や建物に求める条件などを鑑みて構造を選ぶと良いでしょう。
鉄骨鉄筋コンクリートのメリットとデメリットを解説!
鉄骨鉄筋コンクリートと鉄筋コンクリートの特徴について分かったところで、ここからは構造の違いを1つずつ解説していきます。
まずは鉄骨鉄筋コンクリートについて、メリット・デメリットを解説します。
【鉄骨鉄筋コンクリートのメリット】
SRC=鉄骨鉄筋コンクリートのメリットは以下の5つです。
・耐久性・耐震性・耐火性に優れている
・遮音性が鉄筋コンクリート造より高い
・鉄骨も使用するため強度が高い
・耐用年数が長い
・柱を少なくして大きな空間を作れる
耐久性・耐震性・耐火性に関しては、柔軟性と強度に優れた鉄筋と鉄骨を使用することで実現されています。特に耐久性と耐震性は鉄筋コンクリートより優れているので、この2つにこだわりのある人は参考にすると良いでしょう。
耐火性に関しては、耐火性の高い鉄筋が覆われていることで火災を防ぐ=全体的に耐火性が上がるという構図が生まれます。
遮音性が叶うのは、重量や密度の高いコンクリートで建物が覆われていることが関係しています。遮音性は鉄骨鉄筋コンクリートと鉄筋コンクリートとではあまり遜色ないですが、暮らしていくうえで重要なポイントの一つです。入居前に隣人や周辺の音を確認すると安心できるでしょう。
鉄骨鉄筋コンクリートは鉄筋だけでなく鉄骨を使用することで強度が上がり、比例して耐用年数が長くなります。
建物自体に強度があるので、必要最低限の柱や梁を残した空間作りが可能になり、大きく開放的な空間が作れるのも特徴です。
【鉄骨鉄筋コンクリートのデメリット】
鉄骨鉄筋コンクリートのデメリットは以下の3つです。
・材料費や人件費などの建築コストが高く、建築期間が長い
・設計上の制約が増える
・Wi-Fiなどの電波が弱まりやすい
建築コストが高くなるのは、建築にあたって鉄筋と鉄骨の2つの材料を使用するからです。2つの材料を使うことで建築の工程が増え建築期間も長くなるため、コストと人件費が上がることになります。
設計上の制約とは鉄骨を使用することで発生する自由度の低さをさすので、自由な設計をしたい方は注意が必要です。
電波が弱まりやすい要因は、構造部分に隙間が少ないことが関係します。隙間が少ないことで電波が届きにくくなるので、仕事などで電波を気にするような方は注意が必要です。
鉄骨鉄筋コンクリートを使えば、頑丈な構造に加えて大きな空間を造り出せることが分かりました。
しかしその裏には電波の届きにくさやコストがかかるデメリットが発生するので、理解した上で利用することをおすすめします。
鉄筋コンクリートのメリットとデメリットを解説!
次に、鉄筋とコンクリートを組み合わせて建物を支える鉄筋コンクリート造のメリットとデメリットを解説します。
【鉄筋コンクリートのメリット】
RC=鉄筋コンクリートのメリットは以下の5つです。
・強度が高い
・法定耐用年数が長くなる
・耐火性に優れている
・遮音性が高い
・光熱費を抑えられる
鉄筋コンクリート造では、コンクリートの中に鉄筋を入れることで強度を出すことができます。コンクリートが引っ張られる力と圧縮される力が働き、2つの力が組み合わさって強度を出す仕組みです。強度が高くなると建物が頑丈になり、建物の耐用年数も長くなります。
耐火性に関しては、耐火性の高いコンクリートが鉄筋を覆うことで、火から守る=全体に耐火性に優れた構造になります。建物に耐火性があると、周囲にもたらす火災の影響も少なくなり安心です。
建物の遮音性は、コンクリートの比重や密度が大きいほど効果を発揮します。鉄筋コンクリート造はコンクリートの中に鉄筋を入れているので、他の鉄骨造や木造と比べて自然と比重が多くなります。すなわち遮音性の確保がされるので、隣人や周囲の住宅の音を気にしたり気にされたりする必要が無くなるのです。また遮音性があると部屋の気密性が高くなるので、光熱費を抑えることも可能です。
【鉄筋コンクリートのデメリット】
鉄筋コンクリートのデメリットは以下の3つです。
・建築費用が高い
・結露が起こりやすい
・夏場は高温になりやすい
鉄筋コンクリートは、材料として鉄筋とコンクリートを使用しますが、この2つは重量があるため強固な地盤も必要です。場合によって地盤改良費、これらをまとめる人件費という流れで、建築費用が高くなる傾向にあります。
結露が起こりやすい原因は、気密性の高さが関係してきます。気密性の高さは暖かさにも関係しますが、裏を返すと結露やカビが発生しやすくなるのです。定期的な換気や結露が発生した場合は取り除くことで、快適に過ごすことができるでしょう。2003年の建築基準法の改正後は24時間換気システムが義務付けられているので、気になる場合は建物の施工年数を確認すると安心です。
夏場の高温になりやすさは、気密性に加えて熱伝導率の高さが関係します。定期的な換気や建物のメンテナンスをすることで、安心して過ごせるようになるでしょう。
鉄筋コンクリートを使えば、建物自体の強さに加えて、耐火性・遮音性に優れた住みやすい建物になるということが分かりました。
しかし裏を返せばカビや結露が発生しやすくなるので、定期的な建物のメンテナンスは必要です。また構造上コストがかかることも念頭に置いておきましょう。
鉄骨鉄筋コンクリートと鉄筋コンクリート以外にもある!建物構造を解説
ここまで鉄骨鉄筋コンクリートと鉄筋コンクリートの違いやメリットについて解説してきました。しかし、建物の構造はこの2つだけではありません。
このセクションでは鉄骨鉄筋コンクリート・鉄骨コンクリート以外の建物構造を順に6つ解説していきます。
【鉄骨造とは?】
鉄骨造とは鋼鉄(Steel)の構造からS造とも呼ばれる構造で、建物の骨組みに鉄骨を使用した構造のことです。
賃貸物件などの建物に使用されており、鋼材の厚さが6mm以上なら「重量鉄骨」、6mm未満なら「軽量鉄骨」に分けられます。重量鉄骨・軽量鉄骨はそれぞれ使用される建物が異なります。
メリット
鉄骨造のメリットは、シンプルな建築工程と、工事機関を短くできるのと、安定した材料費を確保できることにあります。
シンプルに建築することで工事期間を短くでき、材料加工も少なくできるので材料費や建築費を安くすることも可能です。建築期間を短縮できる商品開発もされているので、品質の安定も計れているのです。
デメリット
鉄骨造のデメリットは耐火性・遮音性・断熱性の低さと、重量鉄骨の場合は強度な地盤が必要になることがあります。
耐火性・遮音性・断熱性については、鉄骨鉄筋コンクリートや鉄筋コンクリートと比べて劣ってしまいがちです。また、重量鉄骨を用いる場合は、住宅の耐震性を高めるために建築費用と別に地盤補強工事が必要となります。安定した地盤にするために数100万円〜の費用がかかってしまう可能性があります。
【軽鉄(軽量鉄骨造)とは?】
軽鉄(軽量鉄骨造)とは厚さ6ミリ以下の鋼板から成る鉄骨造のことで、住宅や商業施設、高齢者向け住宅や災害対策の仮設住宅など幅広く建築されています。
メリット
軽鉄(軽量鉄骨造)は安定した品質を確保したうえでコストを抑えられ、なおかつ耐用年数が長いことが利点です。
コストを抑えられる点は、軽鉄造が主にプレハブ小屋として建設されるからです。軽鉄造はコストを抑えつつ害虫などの被害も受けにくい安定した品質を確保できるので、作業工数も減らすことができます。耐用年数に関しては、軽鉄(軽量鉄骨造)は27年と比較的長めです。
デメリット
軽鉄(軽量鉄骨造)は耐火性・断熱性・遮音性が低く、間取り変更が難しいことが難点です。
熱の影響は軽鉄が熱の限界を超えると材質が曲がることが関係し、これにより室内に熱さなどの温度がダイレクトに伝わってしまいます。また、遮音性が低いため、隣人や周辺住民の大きめの生活音が聞こえやすく・伝わりやすくなるでしょう。さらに、「筋交い」と呼ばれる柱の間に斜めに入れる部材が必要なことから、大きな間取り変更が難しくなってしまいます。
【合成樹脂造とは?】
合成樹脂造とは合成高分子化合物のことで、成形・色付けしやすさが特徴です。
大きく分けてプラスチックに分類され、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の2種類があります。熱可塑性樹脂は熱を加えると柔らかくなり、熱硬化性樹脂は熱を加え続けると硬化する性質があります。
メリット
合成樹脂造は成形・色付けのしやすさ、一部で耐衝撃性の高さ、コストを抑えられることがメリットです。
成形・色付けのしやすさは、加工方法の多さに繋がります。材質が軽く加工がしやすいため、基本的にコストを抑えての建築が可能です。腐食しにくいという特徴も兼ね備えているので、軽量+腐食しない性質を併せもった建築を実現できます。
デメリット
合成樹脂は種類により熱・光に弱く、傷や変形ができやすく、強度の低さがデメリットです。
熱や光に関しては、長年熱や光にさらされていることで発生する経年劣化が原因です。傷のできやすさについては使用環境が関係するので、日頃から丁寧に扱うことで合成樹脂のもちを良くできます。しかし、金属と比べて強度はどうしても低くなってしまいます。
【木造とは?】
木造とはその名の通り建物の主要部分に木造を用いて建築した建物のことです。木造住宅だけでなく木造の橋・西洋家屋などがこれにあたります。
メリット
木造は軽量でコストを抑えつつ、断熱性・通気性が高いこと、自然を身近に感じられることがメリットです。
木造はコンクリートや鉄に比べ断熱性に優れており、室内の涼しさ・暖かさを一定に保つことができます。さらに、多孔質な構造から通気性もよく、木材が乾燥する際には湿気を吸収するため、湿気対策にも優れた効果を発揮します。
デメリット
木造は職人の技量に左右されやすく、害虫被害に遭ったら材質が痛む恐れがあります。
木造は天然木材を使用することから素材に差が生じ、職人によって仕上がりに差が出がちです。木材構造における害虫被害はシロアリ被害が多くを占めており、害虫の被害に遭うと材質が痛みます。害虫被害による素材の劣化は、建物の強度に直結する大きな問題です。
【RS造とは?】
RS構造とはReinforced-Steel(鉄筋コンクリート)の略語で、建物の下部を鉄筋コンクリート造(RC)、建物の上部を鉄骨造(S造)で構成する混合構造を指します。RC構造と呼ばれる鉄筋コンクリート造との違いは、建物の構造形態にあります。
メリット
RS造は強度と耐久性に優れており、形状の自由度が高い点やRC構造よりもコストが抑えられるのがメリットです。
RS造は鉄筋コンクリートと鉄骨の両方で造る建物なので、強度と耐久性に優れています。強度の高さから形の自由度も高いため、自分好みの空間を造れるという魅力もあります。また、部分的に材料を使い分けるので、RC構造=鉄筋コンクリート造よりもコストを抑えることが可能です。
デメリット
RS造は下部と上部で生じる住み心地の違いと、工事期間が長くなる難点があります。
RS造は下部が鉄筋コンクリート造、上部が鉄骨造という2種類の異なる材質を用いています。上部は鉄骨造なので遮音性や気密性が低くなり、隣人の話し声や歩く音などが聞こえやすくなるので、注意が必要です。2つの異なる材料を使って建築するので、工事に時間がかかってしまいます。
【WRC造とは?】
WRC造とは“Wall Reinforced Concrete”の略語で、壁式鉄筋コンクリート造のことです。RC=鉄筋コンクリート造と同じ造りですが、柱や梁を使用せず壁で建物を支える構造です。これによりデッドスペースをなくせるので、比較的自由な設計が可能になります。
メリット
WRC造はデッドスペースが生じにくいため自由な設計がしやすく、断熱性や遮音性に優れています。
建設の際は柱や梁を使用せず建設できるので、デッドスペースを無くした自由な設計が可能です。
使用する鉄筋コンクリートは断熱性や遮音性だけでなく気密性や耐水性などに優れているので、快適に過ごすことができるでしょう。
デメリット
WRC造は間取りに制限があるため壁の撤去などの大きな工事がしづらく、耐震性確保のために壁の厚みが生じてしまいます。
柱や梁を使用せず建築するので壁の厚みが重要になりますが、壁を撤去し過ぎると耐震に問題が出てきます。そのため壁を撤去しづらかったりある程度壁の厚みが必要になります。それに伴い、間取り変更にも制約があるということを覚えておくと良いでしょう。
それぞれの建設構造をまとめると、以下のようになります。
|
メリット |
デメリット |
鉄骨造 |
安定した材料確保と シンプルに建築することで、 建築機関を短縮する |
耐火性・遮音性・断熱性が低く、 強度地盤が必要 (重量鉄骨の場合) |
軽鉄 (軽量鉄骨造) |
安定した品質を確保することで コストを抑え、耐用年数を長くする |
耐火性・断熱性・遮音性が低く、 間取り変更が難しい |
合成樹脂造 |
成形・色付けのしやすさ、 一部耐衝撃性の高さ、 コストを抑える |
熱・光に弱く、 傷や変形ができやすく、 強度の低さが難点 |
木造 |
軽量でコストを抑えつつ、 断熱性・通気性が高い |
職人の技量に左右されやすく、 害虫被害に遭いやすい |
RS構造 |
形状の自由度と優れた耐久性、 RC構造よりコストを抑えられる |
下部と上部で生じる住み心地の違いと、 工事期間が長さ |
WRC構造 |
デッドスペースを無くした 自由設計ができ、 断熱性や遮音性に優れる |
間取り制限のため大きな工事がしづらく、 耐震性確保のため壁の厚みがでる |
予算や住宅に求める条件は人それぞれ異なるため、自分のニーズに最適な建築方法を慎重に比較検討することが大切です。
鉄骨鉄筋コンクリートなどの建物構造別の家賃相場
ここまで紹介した建物構造の家賃目安を見てみましょう。建物の家賃相場は地域で異なりますが、基本的に造りによる相場観はそこまで変わりません。
東京都全体で建設された建物の家賃相場を表したのが次の表です。
|
家賃相場 |
鉄骨鉄筋コンクリート (SRC) |
ワンルームで7.7万円~ 1LDKで13万円~ |
鉄筋コンクリート (RC) |
ワンルームで7万円~ 1LDKで8万円~ |
鉄骨造 |
ワンルームで5万円~ 1LDKで7万円~ |
木造 |
ワンルームで5万円~ 1LDKで6.5万円~ |
エリアごとに家賃は異なるため、より正確な家賃を算出したい場合は、エリアを絞って検索することをおすすめします。
建物の耐用年数の意味
建物における耐用年数とは、建物が使用に耐えられなくなるまでの年数のことです。
建物の劣化だけでなく、経済面や機能面などの総合的な意味を含めた利用可能年数のことをさします。
本来期待される役割が果たせなくなることで、建物は価値を失ってしまいます。
似た言葉で耐久年数がありますが、この2つは意味が異なります。
耐久年数は建物の物理的な寿命で、耐用年数は建物の資産としての価値をどれだけ保てるか示した期間のことです。
耐用年数が長いと経費を少しずつ計上することが可能ですが、耐用年数を過ぎた建物は資産価値が無くなることに加えて建物のメンテナンスも加わります。すると、必然と建物のコストがかかってしまうので注意が必要です。
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