渋谷区で中古マンションを探し始めると、多くの方が最初に気にするのが「結局、いくらの年収があれば買えるのか」「予算はいくらまでが現実的なのか」という点です。
結論からいうと、いまの渋谷区では“買えるかどうか”と“無理なく住み続けられるか”は別問題です。
銀行の審査が通る金額だけで考えると、購入後の生活がかなり重くなってしまうケースも珍しくありません。
実際、市場全体を見ると、東京23区の中古マンション価格はかなり高い水準にあります。
東京カンテイによると、2026年5月時点の東京23区の中古マンション70㎡換算価格は1億2,849万円です。
さらに渋谷区内の人気駅では、渋谷駅が坪979万円、恵比寿駅が坪655万円、代々木上原駅が坪662万円という水準で、駅や立地によって差はあるものの、渋谷区で50㎡超を狙うと総額1億円前後が視野に入ってきやすい相場です。
しかも、渋谷区の価格はここ10年でかなり上がっています。
渋谷区のマンション平均売買㎡単価は2016年の約92万円から、2025年6月には約179万円まで上昇したとされています。
つまり、「以前の感覚で考えた予算」がそのまま通用しにくいのが、今の渋谷区です。
では年収はどれくらい必要なのか?
ここで大事なのは、「審査上の上限」と「現実的に無理のない水準」を分けて考えることです。
フラット35の基準では、年収400万円以上なら総返済負担率35%以下、400万円未満なら30%以下が目安です。
ただし、これはあくまで審査基準です。
住宅金融支援機構の実態調査では、住宅ローン利用者の返済負担率で最も多いレンジは15%超~20%以内でした。
さらに、2024年度のフラット35利用者調査では、中古マンション購入者の平均は年収倍率5.5倍、総返済負担率19.7%となっており、実際の購入者は「上限いっぱい」ではなく、もう少し余裕を持った資金計画で買っていることが分かります。
この平均的な年収倍率5.5倍を基準に逆算すると、渋谷区での予算感はかなりシビアです。
たとえば物件価格が8,000万円なら世帯年収の目安は約1,450万円、1億円なら約1,820万円、1億2,000万円なら約2,180万円、1億4,000万円なら約2,550万円がひとつの目安になります。
もちろん、頭金の有無や他の借入れ状況で変わりますが、「渋谷区で無理なく買う」基準で見ると、年収1,000万円未満はかなり条件調整が必要、1,500万円前後でようやく選択肢が増え、2,000万円超で50〜60㎡台が現実味を帯びる、というのがリアルに近い感覚です。
見落としやすいのは「住宅ローン以外の固定費」
もうひとつ、渋谷区の中古マンション購入で見落とされやすいのが、管理費と修繕積立金です。
東日本不動産流通機構の2024年度データでは、東京都区部の中古マンションの月額平均は、管理費が14,906円、修繕積立金が12,807円、合計で27,713円でした。
さらに㎡単価ベースでは473円/㎡です。つまり、60㎡なら月約2.8万円、70㎡なら月約3.3万円前後が、ローン返済とは別に毎月かかるイメージになります。
しかも、この固定費は築年数によって重くなりやすい傾向があります。
REINSの資料では、管理費・修繕積立金の合計は築21〜30年帯で㎡あたり473円と高く、築10年以内や築11〜20年より負担感が増しています。
渋谷区は中古マンションの選択肢が広い一方で、築年数が進んだ物件も多いため、「物件価格が少し安いからお得」とは言い切れません。
総額だけでなく、毎月の固定費まで含めて比較する必要があります。
年収帯ごとの“リアルな買い方”
世帯年収1,000万円前後の場合、渋谷区で中古マンションを買うこと自体は不可能ではありません。
ただし、現実的には面積をコンパクトにする、築年数を許容する、駅距離を広げる、町名を広げるといった調整が必要になりやすいです。
いわゆる「渋谷駅徒歩圏」「恵比寿で広さも確保」といった買い方は難しく、条件の優先順位をかなり明確にしないと、予算と希望のギャップが大きくなります。
世帯年収1,500万円前後になると、渋谷区内でも現実味はかなり増します。
1LDK〜コンパクト2LDK、あるいは50㎡前後まで視野に入りやすくなり、築年数や駅距離とのバランスを取れば検討しやすい価格帯に届くケースが出てきます。
ただし、人気エリアの駅近・築浅・管理良好まで求めると、まだ予算はタイトです。
世帯年収2,000万円前後になると、渋谷区での中古マンション購入はかなり現実的になります。
50〜60㎡台、あるいはエリアによってはそれ以上も選択肢に入ります。
ただ、それでも渋谷駅や恵比寿駅、代々木上原駅のような強い人気駅では、条件の良い住戸は1億円を超えやすく、広さ・駅距離・築年数のどこかで調整が必要になることは珍しくありません。
そして、70㎡前後のファミリータイプを渋谷区でしっかり狙うとなると、世帯年収は2,000万円台前半〜後半がひとつの目安になってきます。
東京23区平均でも70㎡換算価格が1億2,849万円に達しており、渋谷区の人気エリアはそれ以上のことも多いからです。
渋谷区でファミリータイプを買う人の“リアル”は、単純な単独年収勝負というより、共働き世帯や住み替えで自己資金を持つ世帯が強い市場だと考えたほうが実態に近いでしょう。
恵比寿エリアに関するコラムでも、主な購入層として共働き世帯、30〜40代の住み替え層、賃貸からのステップアップ層が挙げられています。
では、どう予算を決めるべきか
渋谷区で失敗しにくい予算の決め方は、「物件価格から考える」のではなく、「毎月いくらなら無理なく払い続けられるか」から逆算することです。
既存コラムでも、相場感をつかむときは総額だけでなく平米単価、町名ごとの差、売り出し価格と成約価格の違い、そして住宅ローンからの逆算が大切だと整理されています。
渋谷区は同じ区内でも価格差が大きいため、「渋谷区の平均」ではなく、希望する町名と条件を固定して判断することが大切です。
渋谷区の中古マンション購入は、年収だけで決まる話ではありません。
実際には、自己資金、管理費・修繕積立金、将来の教育費や住み替えの可能性まで含めて考える必要があります。
だからこそ、「年収がいくらあれば買えるか」よりも、「自分たちの家計で、どの価格帯なら安心して持ち続けられるか」を先に固めることが、結果的に失敗しない近道です。
(初回投稿日:2026年7月17日)

