「渋谷区のマンションだから、相続すれば大きな資産になる」。
そう考える一方で、実際にいくらで売れるのか、相続税はいくらになるのか分からず、不安を感じる方もいるでしょう。
マンションの価値は一つの数字では表せません。
相続前に押さえたいのは、売却するときの価格と相続税を計算するときの評価額を分けて考えること、そして物件を持ち続ける場合の負担まで確認することです。
渋谷区という住所だけでは価格は決まらない
渋谷区には、渋谷駅周辺の商業地だけでなく、恵比寿、代官山、広尾、初台、笹塚など、性格の異なる住宅地があります。同じ区内でも、最寄り駅や駅までの距離、周辺の街並み、生活の利便性によって購入希望者の層は変わります。
「渋谷区の中古マンション相場」を一律に当てはめても、個別の住戸の価格はつかめません。
例えば、駅に近いコンパクトな住戸と、落ち着いた住宅街にある広い住戸では、比較すべき物件が違います。
築年数が同程度でも、階数や向き、眺望、間取り、室内の状態によって査定額に差が出ます。
再開発が進む地域では周辺環境の変化にも目が向きますが、将来への期待だけで価格を決めず、現在の成約事例と照らし合わせることが大切です。
古いマンションでも、交通の便や住環境、適切な維持管理によって購入希望者が見つかることがあります。
一方、人気のある駅の近くでも、使いにくい間取りや騒音、日当たりなどが価格に響くことがあります。
築年数だけで「価値がある」「価値がない」と決めつけず、誰がその部屋を買いたいと思うかを考えてみましょう。
相場を調べる際は、売り出し中の物件の価格に加え、実際に取引された価格を見ましょう。
売り出し価格は売主の希望を含むため、そのまま成約価格にはなりません。
国土交通省の「不動産情報ライブラリ」では取引価格などを確認できます。
広さや築年数、駅からの距離が近い事例を集め、対象のマンションとの違いを見比べるのが出発点です。
建物の管理状態も価値を左右する
マンションを相続すると、専有部分だけでなく、建物全体の管理にも関わることになります。
外壁や共用設備の修繕が計画どおりに進んでいるか、修繕積立金は十分か、管理費などに滞納はないか。
こうした情報は、購入を検討する人にとっても重要です。
特に築年数が進んだ物件では、室内だけをきれいにしても、共用部分の劣化や将来の大きな修繕負担を埋め合わせることは難しくなります。
管理組合の総会議事録、長期修繕計画、修繕履歴、管理費・修繕積立金の額や滞納状況を確認しましょう。
今後の積立金増額や一時金の予定があれば、保有する場合の支出にも、売却を考える場合の判断にも影響します。
建物の状態を見るときは、耐震性や設備の更新状況も確認したいところです。
エレベーターや給排水管などの共用設備は、住戸の内装とは別に管理されます。
購入希望者が住宅ローンを利用できるか、購入後に安心して住めるかを考えるうえでも、建築時期や耐震関係の資料は役立ちます。
資料が手元になければ、管理会社や管理組合に確認しておくと、その後の検討がスムーズです。
また、敷地が所有権か借地権か、住宅ローンの残債があるか、すでに賃借人がいるかも見逃せません。
賃貸中なら賃料収入がある一方で、入居者との契約を引き継ぐことになります。
自由に住んだり、空室として売ったりできる物件とは、選べる方法が異なります。
売却価格と相続税評価額は別の数字
相続税の計算に使う評価額は、売却したときの手取り額ではありません。
一般にマンションは建物部分と土地の持分を分けて評価します。
建物部分には固定資産税評価額、土地部分には路線価などが関係します。
さらに、2024年1月1日以後に相続などで取得した居住用の分譲マンションには、一定の場合、築年数や所在階などを踏まえて評価額を補正するルールが適用されます。
そのため「近隣で1億円の部屋が売りに出ているから、この部屋の相続税評価額も1億円」という計算はできません。
逆に、固定資産税の通知書に書かれた金額だけで、最終的な相続税評価額を判断することもできません。
相続税には預貯金などほかの遺産や、相続人の構成も関わります。売却を見込む価格と税務上の評価をそれぞれ把握して初めて、納税資金や遺産分割について現実的に話し合えます。
さらに、相続人同士で財産を分ける際に目安とする金額も、税務上の評価額と同じとは限りません。
例えば、一人がマンションを取得し、別の相続人が預貯金を受け取るなら、実際に売れると見込まれる金額を踏まえないと、配分に納得しにくい場合があります。
査定額は不動産会社によって幅が出るため、複数の査定を取り、金額の根拠や売却に要する期間も聞いておくと判断しやすくなります。
相続前に「誰が、どう使うか」を決めておく
価値の高いマンションほど、複数の相続人で分け方に悩むことがあります。
一人が住み続けるなら、ほかの相続人に渡す現金を用意できるか。売却して現金で分けるなら、いつ売るか。
賃貸に出すなら、管理や修繕費を誰が負担するか。
これらを整理せずに共有名義にすると、将来の売却や大きな修繕をめぐって意見がまとまりにくくなります。
所有者が元気なうちなら、購入時の売買契約書やリフォーム費用の資料、権利証または登記識別情報、管理規約などの保管場所を確認できます。
売却するときには、購入価格などを示す資料が税金の計算にも役立ちます。
家族の誰かが住む予定があるか、売却への希望は一致しているかも、早めに話しておきたい点です。
相続が発生した後、すぐに売るべきとは限りません。
ただし、住む人がいなくても管理費、修繕積立金、固定資産税などの支払いは続きます。
相続税が課され、一定の期間内に売却する場合には、納めた相続税の一部を売却時の取得費に加算できる特例もあります。
売却を考えるなら、価格だけでなく期限と税負担を合わせて確かめましょう。
賃貸を選ぶ場合も、想定家賃がそのまま手元に残るわけではありません。
管理費や修繕積立金に加え、入居者募集、原状回復、設備交換、空室期間の費用を見込む必要があります。
売却を選ぶ場合には、仲介手数料や登記に関わる費用、譲渡所得に対する税金などを差し引いた手取りを試算します。
居住、賃貸、売却の三つを同じ「手元に残る金額」と「かかる手間」で比較すると、価格の高さだけに引っ張られずに済みます。
渋谷区マンションの価値を知ることは、高い査定額を見つけることだけではありません。
同じ条件の取引事例から売れる価格を見積もり、建物の管理と保有費用を確かめ、相続税評価額とは分けて整理する。
そのうえで家族にとって住む、貸す、売るのどれが適切かを考えることが、相続後の判断を落ち着いて進める第一歩になります。
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