渋谷区は、東京23区の中でも再開発の動きが最もダイナミックなエリアのひとつです。
渋谷駅周辺の大規模再開発を筆頭に、原宿、神宮前、恵比寿寄りのエリアまで、街の景色は数年単位で大きく変わっています。
こうした再開発の動きの中で、近接エリアに物件を所有している方が悩みやすいのが「今売るべきか」「完成を待つべきか」という判断です。
再開発と聞くと、多くの人は「将来さらに高くなるのでは?」と期待します。
しかし、現実には待てば必ず上がるとは限らず、むしろタイミングを誤ることで売却チャンスを逃すケースも少なくありません。
本コラムでは、渋谷区の再開発エリア近接物件について、売り急ぐべきケースと待つべきケースを整理しながら、判断の軸となる考え方を解説していきます。
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再開発=必ず価格が上がる、ではない
最初に押さえておきたいのは、「再開発=価格が必ず上がる」という単純な構図は成り立たない、という点です。
確かに、再開発は街の利便性やブランド力を高める効果があります。
駅直結の商業施設ができたり、オフィスが増えたり、歩行者動線が整備されたりすれば、人の流れは変わり、エリア全体の評価も上がりやすくなります。
しかし不動産価格は、単に「街が良くなる」という要素だけで決まるわけではありません。
・金利動向
・融資の出やすさ
・新築供給量
・投資家の動き
・税制改正
といったマクロ要因も強く影響します。
再開発が完成する頃に、金利が大きく上がっていたり、融資が厳格化されていたりすれば、買い手が減り、価格が伸び悩む可能性も十分にあります。
つまり、「再開発があるから待てば安心」という考え方は、やや楽観的すぎるのです。
★売り急ぐべきケース
では、どのような場合に「待つ」よりも「早めに売る」判断が合理的になるのでしょうか。
1. 再開発の「期待値」がすでに価格に織り込まれている
再開発が発表された直後や、計画が具体化してメディア露出が増えた段階で、相場が一段上がるケースはよくあります。
これは、将来の利便性向上やブランド力アップを見越した「期待値」が価格に反映されるからです。
問題は、この期待値がすでに十分織り込まれている場合です。完成を待っても、その後の価格上昇余地が小さい可能性があります。
特に渋谷区のような人気エリアでは、再開発情報は早い段階から市場に共有されやすく、プロの投資家やデベロッパーも動きが早いのが特徴。
「完成したらもっと上がるはず」と思って待っていたら、実際には完成前がピークだった、ということも珍しくありません。
2. 物件自体の競争力が年々落ちていく
再開発が進むと、周辺には新築マンションや高規格のオフィスビルが供給されることが多くなります。
そうなると、築年数が進んだ中古物件は、相対的に見劣りしやすくなります。
例えば、
・専有面積が小さい
・天井が低い
・共用部が古い
・耐震基準が旧耐震
といった条件の物件は、新築と並べられたときに不利になりがちです。
再開発によって街の平均水準が上がるほど、古い物件は“時代遅れ”として評価が下がるリスクもあります。
この場合、「街が良くなる=自分の物件も評価される」とは限らず、むしろ相対的に弱くなる可能性があるため、早めの売却が合理的になることがあります。
3. 自身のライフプランが変わっている
不動産は資産であると同時に、人生の選択とも密接に関わります。
・住み替えを検討している
・相続対策を考え始めている
・老後資金を確保したい
・事業資金として現金化したい
こうした事情がある場合、「再開発を待つ」という判断が必ずしもベストとは限りません。
価格が高止まりしているタイミングで確実に現金化する方が、心理的にも経済的にも安心感が大きいケースも多いです。
★待つべきケース
一方で、「今は売らずに待つ方が合理的」というケースも確実に存在します。
1. 再開発による実需層の流入が見込める
再開発によって、単なる観光地ではなく「住みやすい街」に進化する場合、実際に住みたい人が増え、相場が底上げされることがあります。
例えば、
・スーパーや医療施設の増設
・保育園や学校の整備
・公園や歩行者空間の拡充
といった要素が含まれる再開発は、ファミリー層や長期居住層を呼び込みやすく、価格が安定的に上昇しやすい傾向があります。
投資マネーだけでなく「住みたい人」が増える再開発は、完成後に評価が高まる可能性があります。
2. 物件自体のスペックが高い
再開発エリアに近接しているだけでなく、
・管理状態が良い
・立地が明確に良い(駅距離、生活動線)
・間取りや広さに希少性がある
といった強みを持つ物件は、時間が経っても価値が落ちにくい傾向があります。
こうした物件は、再開発完成後に“選ばれる側”になりやすく、価格上昇の恩恵を受けやすいです。
3. 収益性が安定している
賃貸に出している場合、
・空室率が低い
・賃料が安定している
・修繕コストがコントロールできている
といった条件が揃っていれば、無理に売却する必要はありません。再開発が進むことで、賃料水準がじわじわ上がる可能性もあります。
判断を誤りやすい「落とし穴」
再開発近接物件の売却判断で、多くの人が陥りやすい落とし穴があります。
・「完成したらニュースになるから、その時が高く売れる」
実際には、価格はニュースになる前に動くことが多いです。
完成時にはすでに市場が織り込んでいるケースも少なくありません。
・「周りが上がっているから自分も上がるはず」
同じエリアでも、物件ごとの差は年々広がります。
立地・管理・規模・向きなどで評価は大きく変わります。
・「なんとなく待つ」
明確な理由なく「もう少し様子を見る」を繰り返すと、売り時を逃す可能性が高まります。
結論:大切なのは相場ではなく自分の出口戦略
渋谷区の再開発エリア近接物件において、「売り急ぐべきか、待つべきか」という問いに万能な正解はありません。
重要なのは、
・自分の物件は、再開発の恩恵を受けやすいか
・すでに期待値が織り込まれていないか
・築年数や競争力はどう推移するか
・自分のライフプランと合っているか
といった点を冷静に整理することです。
不動産売却は「一番高い瞬間」を狙うゲームではなく、「納得できる出口」を設計する行為です。
再開発という分かりやすいイベントに振り回されるのではなく、自分にとって最も合理的なタイミングを見極めることが、後悔しない選択につながります。
もし判断に迷う場合は、「今売ったらいくらか」「3年後・5年後の想定価格はどうか」「その間にかかるコストはいくらか」を具体的な数字で比較することをおすすめします。
感覚ではなく、数字で考えることで、再開発という“期待”に振り回されず、現実的な判断がしやすくなります。
渋谷区という変化の激しい街だからこそ、資産の扱いも感情ではなく戦略で考えていきましょう。
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