渋谷区の中古マンション相場は、ここ数年で大きく様変わりしました。
「とにかく高くなった」という印象を持つ人も多いですが、実際には単純な価格上昇以上に、市場の評価軸や物件の選ばれ方そのものが変化しています。
以前は「渋谷区=資産価値が高い」「都心だから安心」といった大枠の評価で語られることが多くありました。
しかし現在は、同じ渋谷区内でもエリアや物件条件によって、価格の伸び方や評価に明確な差が生まれています。
ここ数年の相場を正しく理解するには、平均価格だけを見るのではなく、その背景にある構造変化を押さえることが欠かせません。
ここ数年の相場全体の流れ
渋谷区の中古マンション相場は、長期的に見ると上昇基調にあります。
首都圏全体でも中古マンションの㎡単価は上昇傾向が続いており、渋谷区はその中でも一貫して高水準を維持してきました。
ただし、近年の動きは「一律に上がる」フェーズから変化しています。
以前は比較的広い範囲で価格が底上げされていましたが、現在は「評価される物件」と「横ばい・伸び悩む物件」がはっきり分かれる状況です。
相場が上がっているという事実以上に、価格形成のロジックそのものが変化している点が、ここ数年の大きな特徴と言えるでしょう。
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渋谷区の相場推移を金額で見ると
各種不動産市況データや、首都圏における中古マンションの成約事例を総合的に見ると、渋谷区の中古マンション相場はここ数年で金額ベースでも大きく水準を切り上げています。
たとえば、区内で流通量が多い70㎡前後・築10〜20年・駅徒歩10分圏内の中古マンションを基準にすると、2019〜2020年頃は総額で8,000万円前後〜1億円弱が一つのボリュームゾーンでした。
これが現在では、同条件で9,500万円〜1億2,000万円前後まで水準が切り上がっているケースが多く見られます。
㎡単価で見ても、当時は80万〜90万円台が中心だったエリアでも、現在は100万円前後、人気エリアでは120万円前後に達する事例も珍しくありません。
70㎡換算では、1,000万円〜2,000万円程度の上昇が起きているイメージです。
渋谷区内で広がるエリア格差
前章で見たように、渋谷区の中古マンション相場は金額ベースで上昇していますが、その伸び方にはエリアごとに大きな差があります。
同じ築年数・同程度の広さで比較した場合でも、恵比寿・代官山・広尾寄り、表参道周辺では、㎡単価で100万円前後、条件の良い物件ではそれ以上になるケースも珍しくありません。
ブランド力や交通利便性に加え、街のイメージや生活環境が評価され、相場を押し上げています。
一方、代々木上原・富ヶ谷エリアは、都心へのアクセスと落ち着いた住環境のバランスが評価され、㎡単価は高水準ながらも、恵比寿・表参道エリアと比べるとやや控えめな価格帯で推移する傾向があります。
これに対して、笹塚・幡ヶ谷・初台方面では、㎡単価が数十万円単位で差が出ることもあり、総額ベースでは同じ渋谷区内でも現実的に検討しやすい価格帯の物件が多く見られます。
このように、渋谷区の中古マンション市場では「渋谷区だから高い」のではなく、「どのエリアか」によって価格帯や上昇幅が大きく異なる状況がより明確になっています。
新築マンション価格高騰による中古シフト
相場変化の大きな要因の一つが、新築マンション価格の高騰です。
建築費や人件費の上昇、用地取得の難化などを背景に、新築マンションの分譲価格は年々上がっています。
渋谷区はもともと新築供給が少ないエリアであるため、新築価格の上昇が中古市場に直接影響しやすい構造があります。
「新築は手が届かないが、中古なら条件の良い物件を選びたい」と考える実需層が、中古市場に流れ込みました。
この新築代替需要が、駅近や人気エリアの中古マンション価格を下支えしています。
都心回帰の再加速
コロナ禍では一時的に郊外志向が強まりましたが、ここ数年で再び都心回帰の動きが強まっています。
出社頻度の増加や移動時間の短縮を重視する層が増え、都市部の利便性が再評価されています。
渋谷区は、複数路線が利用できる交通利便性と、商業・業務・文化機能が集積するエリアです。
職住近接を重視する層にとっては依然として魅力が高く、実需が相場を下支えしています。
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金利環境への意識変化と選別の強まり
住宅ローン金利に対する意識も、ここ数年で大きく変わりました。
「低金利だからとにかく買う」から、「将来の金利変動も見据えて無理のない判断をする」へと考え方がシフトしています。
その結果、駅徒歩10分以内、複数路線が利用できる、間取りが標準的で需要が広いといった、将来の売却や賃貸を見据えやすい物件に人気が集中しています。
一方で、駅から遠い物件や条件にクセがある物件は、以前よりも価格交渉が入りやすくなっています。
再開発と管理状態が左右する中古マンションの評価
渋谷駅周辺では大規模な再開発が継続しており、街全体の利便性やブランド力が底上げされています。
再開発は短期的な利便性向上にとどまらず、「将来価値が下がりにくい」という期待を生み、その評価が中古マンション価格にも織り込まれやすくなっています。
特に渋谷駅へのアクセスが良いエリアではこの影響が顕著で、築年数の新しさ以上に物件の本質的な価値が見られる傾向が強まっています。
以前は築浅物件が有利とされがちでしたが、近年は管理組合がきちんと機能しているか、修繕積立金や長期修繕計画が現実的かといった管理状態が重視されるようになり、渋谷区では築年数が経過していても管理の良いマンションは安定した評価を維持しています。
実需と投資需要が重なる渋谷区市場
渋谷区は、東京都内でも特に賃貸需要が強いエリアの一つです。
単身者・DINKs・共働き世帯など幅広い層の賃貸ニーズが安定しており、購入時点では実需目的であっても、将来的に賃貸に出すことを視野に入れて検討する人が少なくありません。
そのため、実際に住む人と投資目的の買い手が同じ物件を検討するケースも多く、特に駅徒歩圏内や間取りが標準的な物件は、実需・投資のどちらからも需要が集まりやすい傾向があります。
この実需と投資需要が重なる市場構造が、条件の良い物件が早く動き、価格が大きく崩れにくい背景となっています。
今後の相場をどう見るか
渋谷区の中古マンション相場は、今後も「一律上昇」ではなく、物件ごとの差が広がる展開が予想されます。
これからは「渋谷区だから安心」ではなく、「渋谷区の中でどんな条件の物件か」を見極めることがより重要になります。
ここ数年で起きた最大の変化は、価格そのものよりも、選ばれ方が変わったことです。
この視点を持つことが、購入・売却いずれの判断においても欠かせません。
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