都市部の渋谷区に暮らす親子は、核家族化、共働き、子どもの孤立など、かつてない子育ての壁に直面しています。
家族と学校だけでは、心の育ちや居場所の確保が難しくなっており、特に夏休みの昼食困難や「孤食(こどもの孤独な食事)」が地味な社会課題として浮かび上がってきました。
そんな中、「地域の力で子どもを育てる」新しい流れが顕在化しており、その中心にあるのが渋谷区の「こどもテーブル」です。
2016年11月に渋谷区が打ち出したこのプロジェクトは、「テーブル一つあれば」「食の提供にこだわらない」多様な居場所として進化し、今では70団体弱が参加しています。
今回は、「こどもテーブル」の成り立ち、運営実態、地域社会への影響、直面する課題、そして未来への展望を深掘りします。
併せて、実際の活動を営む団体やボランティアの声、大学・企業との協働事例も交え、渋谷区版「地域で育む幼少期の環境」とは何かを検証します。
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都市部で進む「子どもの孤立」と行政対応
■都市化と子どもの居場所不足
渋谷区は若者・共働きファミリー率が高く、住環境は高密度・マンション中心。
生活ペースが慌ただしく、地域同士のつながりが希薄になりがちです。
親が仕事で不在の時間帯、子どもは「一人で本を読みながら軽食」や「孤食」状態に陥るケースもあり、そのまま居場所を失う懸念もあります。
■コロナ禍による状況悪化
2020年以降、新型コロナ禍では学校・学童・公共施設が軒並み閉鎖。
子どもだけで家に残されるケースや、昼食食べる機会減少に対し、子どもたちからの「お腹すいた」の声が続出しました。
こうした苦境の中でも渋谷区は「食事とつながり」を軸にプロジェクトを継続し、オンライン形式も含めた活動再開への工夫に取り組みました。
■テーブル=接点の価値
この活動のポイントは「テーブル一つあれば活動を始められる」シンプルさ。
渋谷区議会議員・神薗まちこ氏によれば、「食の提供にこだわらないコアな地域テーブルさえあれば、子どもにとって『いつでも話せる場』が生まれる」とのこと。
そこには「食事」「居場所」「遊び」「学び」「対話」が融合しています。
「こどもテーブル」とは何か-渋谷区事業概略
■事業の概要
渋谷区社会福祉協議会が推進し、地域団体・大学・企業・NPOが連携して運営する「こどもテーブル」は、
・食事の提供(こども食堂)
・学習支援
・季節ワークショップ
・多世代交流居場所
・親支援・相談など
を組み合わせた総合支援型事業です。
■「子ども基金」による助成制度
2016年に設立された「子ども基金」によって、活動団体には「子ども食堂活動助成」(最大10万円/年)、「居場所・学習支援活動助成」(最大5万円/年)が提供され、活動開始のハードルを下げています。
■コンセプトの多様性
「子どもに食べさせるため」から「地域の輪をつなぐ」居場所として拡張し、代々木や桜丘では料理・音楽・プログラミングなど独自の特色を出す団体が続々登場。
そこに若者、高齢者、外国人、学生など多様な世代が参加しています。
■渋谷区の公式支援
区は説明会や講演会、助成募集、広報支援、衛生ガイドラインも提供。
2025年3月には新しい助成募集が公表され、所在地・活動内容のネット共有やInstagramでの広報も積極的に行われています。
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渋谷区の取り組み事例
■活動拠点・団体数の現状
2025年6月時点で、子ども食堂活動を含む「こどもテーブル」は70団体弱に広がっています。
設立当時から「100か所プロジェクト」と銘打っており、ますますの拡大が期待されます
■代表的団体:かぞくのアトリエ
代々木「かぞくのアトリエ」はこどもテーブル事業の一環として、小学生に向けた
さまざまな活動をおこなっています。
たとえば、「みんなでつくろ」と題したイベントでは次のようなコンテンツも。
・「レモネードを作っておしゃべりしよう」
・「ボウリング大会」
・「進級・進学お祝いの日!」
・「宝さがしゲーム!」
・「おいしいココアとトランプの会」
また、コロナ禍となる2020年3月までは有機野菜を使用した参加型こども食堂を実施していました。
【かぞくのアトリエ】
https://kazoku-no-atelier.com/
□関連記事:子供も大人も楽しめる渋谷区の「かぞくのアトリエ」とは?
■多世代・異文化交流:渋谷ずっとも食堂・恵比寿じもと食堂
若者・高齢者・子育て世代がクロスする食堂です。
学びや遊び、語らいを重視し、高齢者の生きがい創出、若者の社会参加促進にも効果あり。
【渋谷ずっとも食堂】
https://shibuya-huanying.jimdofree.com/%E3%81%9A%E3%81%A3%E3%81%A8%E3%82%82%E9%A3%9F%E5%A0%82/
【恵比寿じもと食堂】
■学生との協働:津田塾大学×こどもテーブル
S-SAP協定を結ぶ津田塾大学は、複数拠点へ学生が月1回ボランティア参加しています。
「英語絵本ワークショップ」など学びに遊びを融合し、子どもの感性を刺激。学生も責任感や地域理解を育んでいます。
■アート・プログラミング:みらい区(MIRAIKU)
みらい区ではアートワークショップ、オペラシティを活用した体験、プログラミング・花育・ICT支援など幅広い学びに拡張。
地域の創造の場として機能しています。
【みらい区】
■コロナ禍の挑戦と対応
景丘の家ではオンライン子ども食堂を実施し、家庭とのつながりを継続。
さらにオンライン学習やテイクアウト方式で実開催も再開し、「どこでもつながる」居場所としての可能性を模索しています。
【景丘の家】
□関連記事:子どもたちの笑顔が広がる場所:景丘の家の魅力とは
活動の意義と地域社会への波及
■多世代交流・孤立対策
多世代が集う場は、高齢者の社会参加促進、若者の居場所創出、子どもの安心機会の提供といった相乗効果を生み、都市の「つながりの崩壊」を再構築します。
■教育・学びの補完
学校教育・家庭だけでは難しい英語活動、アート、ICTなどを地域の専門家や大学生が担うことで、学び“チャンス”拡大に寄与しています。
■地域防災・ネットワーク構築
日常的な人間関係を育むことは、災害時など地域を支える力となります。子ども食堂は“地域の安心装置”としての社会的価値を高めています。
■地域コミュニティのにぎわい創出
地域イベントとしても機能し、企業や商店街の協賛・参加を呼び込み、渋谷区全体の“顔の見える関係”に資する場となっています。
課題と展望
■財政・資材の不安定性
助成枠が年額10万円・5万円と小規模で、残りは寄付・物資提供に依存しているのが現状です。
食材・備品の安定調達と継続的支援が課題です。
■ボランティアの定着
活動参加が不定期になりがちな側面も。
特に学生・企業人との連携継続には運営体制・マッチング支援が必要です。
■行政・団体間連携強化
団体間で横の連携が希薄であり、横断的な情報交換・相互支援体制の構築が求められています。
■衛生・安全対応
食品飲食の場となるため、衛生管理は必須。消毒・温度管理・アレルギー対策・保険など対応体制も課題です。
■今後の展望
・助成拡充・企業スポンサー導入による資金基盤強化
・学校・大学・企業との連携による質と範囲の向上
・広報強化による区民理解と参加者・支援者の拡大
・横の連携ネットワーク形成によるノウハウ共有・研修会など
渋谷から全国へ
「こどもテーブル」は渋谷の多様な地域で、「地域の力で子どもを育てる」実践モデルとして進化中です。
家族と地域、教育機関がつながり、世代と文化を超えて育ち合う。その輪は渋谷にとどまらず、地域コミュニティ再構築の全国モデルとなり得ます。
「テーブル一つ」で始まるこの取り組みは、人と人のつながりが都市の安心と未来を生む鍵だと教えてくれます。
今後は行政・企業・市民が協力し、100拠点構想を達成することで、渋谷から「誰一人取りこぼさない社会」へと一歩ずつ歩みを進めていくでしょう。
【こどもテーブル】
https://shibuyaku-kodomo-table.jp/
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